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特集・インタビュー

2019.01.19 332PV

仮想通貨はキャッシュレス化された社会を再キャッシュ化する試みである

PayPayさんのキャンペーンの影響や政府が推進しているというニュースもあり、「キャッシュレス化」というキーワードが世間をにぎわせている。確かに、現金取引を電子化することによって、ユーザー・運営会社双方にメリットのある展開ができるのは間違いない。しかし、お金を電子化することを「キャッシュレス化」と定義し、それを仮想通貨にも当てはめると、誤解を招いてしまうという話をしたいと思う。

そもそもキャッシュとは?

キャッシュとは、現金のこと。法定通貨のお札やコインをキャッシュと表現している。お金には「価値の交換」「価値の保存」「価値の尺度」という3つの機能があり、価値の尺度を測ることができるからこそ、それが交換できるようになり、いつでも交換できるためには、価値を保存できるようにする必要があるということで、この3つでお金というものが機能していると言える。

そのお金の一つである「キャッシュ」には特徴がある。

ちょうど三井住友カードがこんなウェブCMを展開しているので、見てみてほしい

キャッシュレス化を推進する立場からの現金のデメリットをうまく表現したものだが、ここで説明されているお札の話は、実はビットコインに代表される仮想通貨(暗号資産)にも多くの部分当てはまっているのにお気づきだろうか。データ上のお金には誰のものという個人IDは紐づいていない。秘密鍵がただ一つの自分のものであるという証明になるが、これが一旦渡ってしまえば、自分のものであるということは言えなくなってしまう。確かに履歴は残るが、残った履歴にあなたの個人情報そのものはない。残るのはどのアドレスがどのアドレスにどれだけの数量を送付したかだけだ。お札には固有の番号が振ってあるので、実はお札でもこの番号を控えておくことができれば同じようなことはできる。

つまり、キャッシュとキャッシュレスという2つの分類で考えたとき、仮想通貨はどちらに入るのかというと

キャッシュ・・・流通している現金、仮想通貨

キャッシュレス・・・クレジットカード、各企業が提供するペイメントサービス

という分類になるのだ。

仮想通貨はキャッシュレス化された社会を再キャッシュ化する試み

キャッシュレス社会というのは、中央の管理者が個人情報と資産情報を紐づけた上で、誰が誰にどれだけの金額を送付・受領したかをデジタル上で把握するシステムだ。だから、「仮想通貨を使ってキャッシュレス社会を実現」というのは矛盾した主張になってしまう。電子的に管理されるものをもって「キャッシュレス」という定義にしてしまっている人が多いのでそうなってしまうのだろう。これは現状の社会をうまく説明するためにはある程度仕方のないことだ。

しかし、ブロックチェーンや仮想通貨という業界で新しい事業を起こそうと思っている人は、この「お金とは何か?」という問題に対し、正確な理解をしていなければ正しいソリューションを導き出すことはできない。

仮想通貨はキャッシュレス化された社会を再キャッシュ化する試みである。という認識に立つと、また新たな視点が持てるのではないだろうか。キャッシュレスという言葉がバズワード化している今だからこそ、立ち止まって考えてほしい。

 

Akihisa Ishida (石田 陽之)

広島大学文学部言語学専攻卒業。1995年からウェブサイトの制作に触れ、以来20年にわたりウェブ制作・オンラインマーケティングの世界に身を置いている。2013年にマレーシアの企業と共同でビットコイン決済が可能なCtoCマーケットプレイスの開発に関わり、ブロックチェーン技術に触れる。2017年に技術者と共同でエバーシステム株式会社を設立。ブロックチェーンを活用したゲーム開発・アプリ開発を中心に事業展開中。